「地図とカーナビ」

                                   校 長 松 尾 詩 朗 

車での旅。一昔前は、目的地が決まったら地図で下調べをし、迷ったら地図を片手に標識を見たり人に聞いたりしながら、時間はかかっても何とかたどり着くことができました。今はカーナビという画期的な道具ができて、目的地を入力すると、例え迷っても間違ってもとても丁寧に導いてくれます。便利な時代になったと感心する反面、出発前に地図を調べながら道中も含めた目的地への情景を想像し楽しむことや、迷ったときに見知らぬ人に道を尋ね、親切に教えてもらい感激したというような経験をしなくなったことに物足りなさを感じることがあります。何か昔の旅の方が出会った人々も含めた街の風景が記憶として強く残っているような気がします。そして何より、カーナビの指示に従って順調に進むよりも、自分の力でたどり着いたという達成感があったような気もします。苦労した分、一度通った道はよく覚えていました。

子どもたちの毎日の学習に当てはめてみたらどうでしょう。予習(下調べ)をし、授業では間違いながら、迷いながら、分からないことを友だちや先生に聞きながら答えにたどり着く場合。一方、何の心の準備もなく授業に入り、先生の親切丁寧な説明を聞くだけで答えにたどり着こうとする場合。はたしてこの子どもたちが世の中に出たとき、どちらの方が力となっているか。

今、本校では「予習すること」「完全に分かるまで、分からないと言えること」「なぜそうなったのか、相手が分かるように説明すること」を大切にしています。予習するには努力が必要です。「分からない」と正直に言うには勇気が必要です。既にこれらのことを実行し、新たな力をつけはじめてきた子どもが増えつつあります。

2月1日に本校で実施した授業のユニバーサルデザイン研究会において、本校児童・生徒によるフリートーク活動、小3年生理科、5・6年生国語、中1年生理科の公開授業を実施しました。週1回実施しているフリートーク活動により培われたコミュニケーション能力が授業の中で生かされていること、子どもが主体的に学べるような授業の工夫について評価していただきました。そして、二人の講師先生からいくつかキーワードをいただくことができました。本校の特色を生かしながら、「子どもたちが主体的に活動しながら学力を獲得できる魅力ある授業の構築」を目指し、これからも日々の研究を進めていきたいと考えています。